SIerでITエンジニアをしていると、派遣ないし常駐要員として社外からやってくる人と接することが多いです。あるいは自分が常駐要員であるという人も多いでしょう。

そして、これを指して「ITエンジニアは搾取されている」と言われることもしばしばです。間に入っている会社がピンハネしているからです。発注側SIerが70万円払っているのにプログラマ当人の給料は20万円程度、ということもあります。

当然、発注側は専門家としての働きを期待しますが当のプログラマは「こんな安月給で期待されても困る」という状況になります。双方とも不幸であり、ピンハネしている会社だけが儲かっているように見えます。

そんなことは発注側も分かっています。わかっていてなぜ人材派遣会社に発注をするのか、搾取されないためにはどうすればいいのか、私は5年ほど発注側にいましたのでその経験をもとに書いていきたいと思います。

なぜSIerは外注要員を発注するのか

目の前に仕事がある、でも人がいない

SIerが人材紹介会社・人材派遣会社に発注するとき、それは人手不足に困っているときです。つまり「目の前に仕事があるけどそれをこなす人がいない」ときです。

本当は直接雇用で集められればいいのですが、次の問題からそれが難しいです。

  • 仕事に波がある:目の前の仕事が終わったとき、次の仕事があるかどうかわからないので雇用を躊躇することがあります。
  • 求人に応募が来ない:そもそも採用自体が難題です。求人媒体に載せるにもお金がかかります。2~4週間の掲載で数十万円かかります。
  • すぐに人が必要:プロジェクトを受注してから人を集める、ということも多々あります。そんな時に「現職の退社は二か月先になる」というスピード感では間に合いません。派遣会社なら打診から1~2週間で確保できることも多いです。

かといって仕事を失注するのも惜しいです。多少割高でも外注要員を確保してプロジェクトを遂行したほうが良い、という判断になります。

フリーランスへの直接発注は意外と雇用に近い

同じ発注をするなら会社にではなく直接個人(フリーランス)に発注すれば良いのではないか、という疑問もあるかと思います。実際、そうしているSIerもあります。
しかし、やはりそれにもハードルはあります。

  • 個人だと逃げられる可能性がある:プロジェクトが炎上すると逃げだす場合があります。逃げ出した個人を追いかけることは難しいですが、法人なら「代わりの要員をよこせ」ということもできますし、逃亡による損害賠償を請求しやすくなります。法人相手のほうがリスクヘッジしやすいのです。
  • 個人を見つけること自体が難しい:マッチングサイトとして新しいところでは「クラウドワークス」「ランサーズ」、古いところでは「楽天ビジネス」(終了しました)が有名ですが、良い人を見つけるのは難しいです。案件規模が大きいほどに話がこじれやすくなります。
  • クレームをつけにくい:個人相手に直接クレームをつけても改善される期待は薄いです。また、士気を高める必要性など、雇用しているのと同程度の注意を払う必要があります。派遣会社経由なら会社にクレームをつけられますので、SIerの管理能力・教育能力が低くてもなんとかなってしまう側面があります。

結局のところSIerの人材募集・人材教育・人材管理能力の問題ではあるのですが、それらの能力を習得するのはビジネスのスピードに合わず、アウトソーシングしたほうが早い、またはアウトソーシングしながら能力をつけていく、という判断になります。

なぜITエンジニアは人材派遣会社に登録するのか

ひるがえって、なぜプログラマ・SEの人は派遣会社に登録、あるいは入社するのでしょうか。中間搾取が不満であれば直接契約するために動けばいいだけの話です。実際、そうしている人もいます。これには積極的な理由と消極的な理由があります。

営業代行として利用している

ITエンジニアとしての能力が高くても、営業能力が低い場合、または営業という仕事そのものが嫌いという人がいます。この場合はみんな幸せです。SIerは専門技術の提供を受けられ、エンジニアも相応の対価で働けます。派遣会社の取り分は営業代行としてのビジネス価値への対価です。本来あるべき姿はこれになります。

仕事をチョイスしやすくなる

また、仕事先を選びやすくなるメリットもあります。直接雇用だと「その会社が嫌」となった場合には離職するしかなくなりますが、派遣会社を通している場合は「派遣先に問題あり」と自社に報告、正しい手続きのもとプロジェクトを抜けるという手を使えます。

つまり、履歴書を汚さずに仕事を選べます。

腕に自信があればそういうことも可能ですし、専門職の派遣で生きていくなら腕前を磨くべきです。

仕事がなくて派遣せざるを得なくなった

所属している会社に定期的に仕事があれば良いのですが、必ずしも十分な仕事があるとは限りません。何とかして支払うべき給料を稼ぎ出すため、常駐要員として派遣するということもあります。

そもそもが開発会社であり人材派遣会社でない場合、派遣営業はできません。派遣案件を他社からもらうという形になります。

このとき、仕事とお金は次のような流れになります。

[仕事を持っているSIer] ⇒ [人材派遣に強い会社] ⇒ [仕事がなくなったSIer] ⇒ [働く人]

よくある多重請負構造がこうして出来上がります。

仕事がなくなったSIerが立て直して自社案件をできるようになれば良いのですが、ピンハネという”黒字体質”になるため、これを変えるのは経営者の心理的に難しいです。

実質的に派遣会社であることに気づかずに入社

ピンハネは黒字体質であるため、その事業を拡大したくなります。つまり、最初から派遣用に雇用するようになります。いわゆる「SES」です。

こうして自社案件・元受け案件を持ちながら、主力は派遣である会社ができます。派遣仕事が多い時は自社案件を減らし、派遣仕事が少なくなったら自社案件に力を入れる。会社経営として素晴らしいリスク分散であり、当然の経営です。

しかしこの場合、自社Webサイトには派遣のことはあまり書きません。派遣会社として技術力をアピールするためにも自社製品の宣伝をしたほうが良いからです。

そして、エンジニアはそれに気づかずに入社する場合があります。20代ぐらいだと社会の仕組みそのものの理解が足りておらず「会社とはそういうもの」として受け入れてしまいます。

派遣先は炎上案件が多い

中間搾取問題を語るとき、仕事量が多すぎることと合わせて不満をいう場合が多いです。

それはなぜか。理由は上記発注側SIerの事情です。派遣先は「仕事があるけど人がいない」ところであり、仕事量が多いのは当たり前です。派遣されるITエンジニアは「仕事を支援するために」派遣されるのです。楽なわけがありません。

プロジェクトの期日も厳しいです。自社雇用するスピード感では遅いから派遣を頼むのです。どうしたって残業が多くなります。

その分対価をもらえればいいのですが、多重請負構造だと手取り給料が少なくなります。こうしてIT女工哀史が作られてきました。

自社案件・元受け案件に携わるか、派遣に強い会社に入るか

冒頭の「こんな安月給で期待されても困る」問題の根本は多重請負構造によるマージンの大きさです。あいだに入るのが1社であれば「営業代行」としての価値があります。

派遣のお仕事をしたいなら多重ではなく、1社だけにしたいところです。

労働者としてできることは、自社案件・元受け案件を持つ会社を探すことです。また、派遣にメリットを感じるなら、中抜きを1社だけにするために人材派遣に強い会社に入ることです。

どうやって探す?

自社案件・元受け案件を探す場合

自社案件・元受け案件を探す場合、製品の評判から探すか、求人媒体を探すことになります。

求人媒体で探す場合は「客先常駐なし」など書いてあります。そう書くことがメリットであることを媒体担当者は知っていますので、そう書くように勧めてきます。人を集めるための嘘であることもあるので、面接などを通してよく確認する必要があります。

求人媒体はリクナビNEXTが最大手ですが、マイナビも「マイナビエージェント×IT」としてIT系業種に力を入れています。

媒体ではなくワークポートのような転職エージェントもあります。

人材派遣会社を探す場合

多重請負構造ではなく1社だけで済むように派遣会社を探す場合、結構な困難を伴います。会社としては派遣できれば黒字になるので、仕事がなければ多重でも派遣するからです。もちろん、1社だけのほうが利益率をよくできますので好んで多重にはしません。

そのため、元受けSIerが発注しやすいところを探す、ということになります。

いま業界で元気があるのはレバレジーズとギークスです。結構な営業をかけられました……。



ただ、発注側として5年携わっていましたが、どの会社が良いかは非常に流動的と思います。自分の腕を頼りに探すことになるでしょう。

また、腕がなくては派遣としてやっていくのは難しいです。履歴書がきれいでも職務経歴書が汚れていき、最終的に派遣する先がなくなります。ITエンジニアは専門職であり、自ら技術を身に着けていく気概が必要です。